呼吸の基礎~横隔膜と腹腔内圧~

      2018/07/04

「呼吸を変えることができなければ、体の不調は改善できない」とは有名な言葉ですが、呼吸は人間が生きていく上で最重要な行為です。

2~3ヶ月食べなくても生きていくことは可能ですし、数日水を飲まなくても死ぬことはありません。

しかし、ものの5分、呼吸を止めるだけで生命を維持することは難しくなります。

こう考えると、呼吸にもっと目を向けるべきなのは明白です。

呼吸は目に見えにくく(自分では判断し難く意識を向け難い)、反面、食事は目に見えてわかりやすいので意識しやすいのでしょう。

お菓子ばかり食べたり、カップラーメンなどの加工食品の摂取が健康を害することは多くの方が理解しているはずです。

例えば、肌荒れをしたら、「甘いものを食べすぎたかしら…」と食事内容をおそらく振り返ります。

また、花粉症や食物アレルギー症状に悩まされている方はたくさんいらっしゃいます。

 

実は、呼吸のエラーはアレルギー症状を増強することになります。

呼吸を見直し正しい呼吸を身につけることは、人生を確実に好転させます。

肩こりや腰をはじめ、身体の不調の改善のために呼吸について学んでいきましょう。

 

 

呼吸とは

呼吸とは、生体が生命の維持に必要な酸素を外界から取り入れ、代謝の結果生じた二酸化炭素を体外に排出する行為を指します。

上記が行われるためには、「4つのステップ」が必要であり、総称して呼吸と呼びます。平たく言うと、酸素を取り入れて、二酸化炭素を出す!です。

 

https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1892より引用しております

 

  1. 喚起…空気が気管を通り、常に肺から出入りします
  2. 外呼吸…ガス交換(酸素の供給と二酸化炭素の排出)が肺内の血管と肺胞の間で行われます
  3. ガスの運搬…酸素と二酸化炭素が血流にのって肺から各組織へ、あるいは組織から肺へと運搬されます
  4. 内呼吸…各組織の毛細血管にて、血液と組織細胞内でガス交換が行われます

 

理科で習ったことがあるかもしれませんね!

ここで注目したいのは、内呼吸です。

「ガス交換」とありますが、本当にちゃんと酸素が送り届けられているのか?というのが重要です。

酸素は体にあるけれども、効率よくきちんと使われているのか、ということです。

こちらに関しては、改めて後ほどご説明します。

 

 

どうやって息を吸っている?

先程お伝えしたのは、酸素がどうやって身体中に回っていくのか?ということです。

では、どのようにして空気を体内に取り入れているのか?

先程の「①換気」はどうやって起こっているの?というところについてお伝えします。

 

気圧差によって生じる

人間も自然の摂理に従っています。

重力を利用して動いていますし、息も吸います。

 

「気圧」を聞いたことはありますよね。

大気(地球にある気体)は、1013hpaという圧力を持っており、これを1気圧としています。また、1気圧は760mmhgです。

 

 

体内に空気が入り込んでくるのは、気圧差を利用しているからです。

そこで出てくるのが、「陰圧」。

陰圧とは、物体の内部の圧力が外部より低い状態をいいます。気圧は必ず圧の高い方から、低い方へ流れます。つまり、「陽圧から陰圧へ」です。

胸腔内圧は平均-5mmHgです。気圧よりもだいぶ低いですね。

この状態では、体内に常に一定の空気が入っています。

さらに筋肉を活用することで圧を下げ、空気をさらに体内へ呼び込みます。この行為が「吸気(換気)」です。

吸気時は-8mmHgまで下がり、呼気時には-2mmHgまで上昇します(空気が出ていく)。

このようなメカニズムで、体内に空気が入ってきます。

 

http://chuugakurika.com/2018/01/16/post-1394/より引用しております。

 

 

息を吸うために働く筋肉~横隔膜~

空気を取り入れるためには筋肉の活動が必要です。

そのために欠かせないのが、横隔膜です。

焼き肉でいうところの「ハラミ」ですね。

呼吸の主役ともいえる横隔膜ですが、この機能次第で呼吸の良し悪しが決まると言っても過言ではありません。

 

 

横隔膜は上図のような位置にあります。

起始:中央腱

停止:肋骨部…6~12肋骨内側面  胸骨部…胸骨背面 脚部…腰椎1~3の前面

横隔膜は珍しい付着をしています。通常、骨に付着を持ちますが、起始が自分自身(横隔膜)にあります。

そのため、横隔膜自身の状態がどうなっているかによって機能が変わってしまいます。

また、横隔膜は、腱膜性弓という部分で大腰筋と腰方形筋と繋がりがあります。

 

 

現場レベルでは、大腰筋と腰方形筋の緊張が強い場合、横隔膜も緊張状態にあり、「上手く呼吸が行えていない」というケースを目にします。

 

横隔膜は、右側が左側より少し高くなっています。これは肝臓が横隔膜右側の下にあるためです。

逆に左側上部には心臓があり、左側横隔膜を下に押し下げています。

 

 

ドームのテッペンは第6肋骨で、左はそれより半肋骨分くらい下に下がり、後面では第10肋骨がテッペンになり、後ろに向かって少し下がっている形状です。この構造的な差が、機能的役割の違いも生んでおり、身体の問題を引き起こすことにも繋がります。

安静時の吸気では、横隔膜は約1.5cm下降します。

強制吸気では、6〜10cmと大幅に増加し、最大限吸気状態では、右側はTh11まで、左側はTh12まで下がります。

 

 

横隔膜の3つの機能

安静時呼吸において、横隔膜は吸気の約80%を担っています。残りの20%は肋間筋(+斜角筋)です。

横隔膜の機能が低下した場合、それを補うために頸部筋などで代償を起こします。これは不良姿勢の形成のほか、肩こりを引き起こす可能性があります。

 

さて、そんな横隔膜には3つの機能があるとされています。

  1. 呼吸
  2. 姿勢維持
  3. 括約

 

 

呼吸

呼吸のメカニズムについてはすでにお話したので、横隔膜が働いた際の胸郭の動きを見ていきましょう。

横隔膜が収縮すると、胸郭の垂直径、横径、前後径の拡張を起こし、「胸腔体積」が増えます。

胸腔体積が増える=さらに陰圧になることであり、外界から空気が流入してきます。

それは以下のような順で起こります。

  1. 横隔膜の下降とそれに伴うドームの平坦化により、胸郭の垂直径が増す
  2. 横隔膜の下降によって腹圧上昇し、下位肋骨が側方へ拡張
  3. 腹横筋や内臓の反発を受け、起始と停止が逆転し横隔膜肋骨繊維が収縮、中位・下位胸郭が拡張する

 

   

右図:ファッシャルリリーステクニックより引用しております

 

②に関しては、気体で満たされている胸腔よりも液体で満たされている腹腔のほうが体積が変わりにくいため、強い反発感を生みます。(胸腔<腹腔)

そのため、固定点と動作点が切り替わり、③が起きることになります。

 

 

姿勢維持

横隔膜の機能の1つに姿勢維持があります。

この筋だけでそれが叶うわけではありませんが、大きく貢献しています。

横隔膜が収縮すると腹腔に圧力がかかります。

腹腔内の圧力を腹腔内圧 (Intra-abdominal pressure:IAP)といいますが、姿勢維持に働きます。

 

具体的には、3つの働きにより脊柱安定効果があります。

  1. 脊柱伸展モーメントを発生させる
    →腹腔内圧の伸展モーメントと腹筋群の屈曲モーメントの拮抗作用で脊柱安定(McGill 1990)
  2. 脊椎椎間配列を整え、関節突起間関節の剪断力を最小限にする
    →腹腔内圧上昇がピーク値比27~61%の時、腰椎前後の動揺性が8~31%低下減少した(Hodges 2005)
  3. 腹腔内圧上昇により、腹筋群の発揮効率を維持する(筋の長さ-張力関係)
    →体幹における力の伝導効率を高める

 

以上の3つの要因により脊柱は安定化します。つまり、姿勢の安定、維持に貢献します。

 

腹圧は、いわゆるインナーユニットによって保てれています。

インナーユニットとは、横隔膜、腹横筋、骨盤底筋、多裂筋の4つの筋を指します。

これらの協調運動により腰椎骨盤帯はじめ、脊柱を安定化しています。

 

腹腔を「部屋」と捉えると腹圧は理解しやすくなります。

天井=横隔膜

床=骨盤底筋

壁=腹横筋

(柱=多裂筋)

 

 

これらの筋が呼吸時にどういった動きをするかというと、

吸気時では、横隔膜は下降し、骨盤底筋も下降します。腹横筋は圧を内側へ閉じ込めようとエキセントリックに働きます。

呼気時では、横隔膜は上昇し、骨盤底筋も上昇します。腹横筋はコンセントリックに働きます。

呼気、吸気ともに腹圧を適切に保とうとします。

ちなみに、多裂筋は直接的に腹圧に関与はしませんが、腰椎の安定性の2/3を担っており、姿勢の維持に重要です。

【腹腔内圧について、さらに詳しく】

 

  • 腹腔内圧=静水圧であり、理論的には腹腔内のどこでも均一である。(実際には、腸内ガス、腸内の食物があるためそうはならない)
  • 腹腔内圧上昇には、腹壁を全て緊張させる必要がある→腹横筋、横隔膜、骨盤底筋が主である。
  • 吸気時には必ず腹腔圧は低下する。
  • 腹壁の緊張が高い状態=腹圧上昇ではない(腹筋緊張上昇と腹腔内圧は相関しない)
  • バルサルバ操作における腹腔内圧上昇において、腹横筋の貢献が最も大きい。腹直筋は最も低い。
  • 腹腔内圧は胸椎に屈曲方向への力に抵抗する体幹伸展と相関関係がある。
  • 腹腔内圧は椎間板圧を上昇させる。
  • 腹腔内圧の上昇による脊柱安定化作用は、体幹筋群による脊柱安定化作用の二次的副産物であるとする見解もある。

(「脊柱疾患のリハビリテーションの科学的基礎」、「筋・筋膜性腰痛のメカニズムとリハビリテーション」等より)

 

腹圧を最大限上昇させるには、バルサルバのようにいきみ、息を止めておく必要があります。

呼吸をしている際には上昇させることは理論上難しいと考えられます。

では、呼吸エクササイズによってなぜ脊柱安定が起こるかというと、そもそも適切な腹圧を保持できていない状態から改善するからと考えられます。

腹横筋、横隔膜、骨盤底筋のいずれかに機能低下がある(腹壁に弛みがある)場合、腹圧を適切に保つことはできません。

3ヶ月ポジションや6ヶ月ポジションなど、横隔膜と骨盤底筋を向き合わせ、腹横筋の協調を保ちながら呼吸をすることで、正常に回復できるのではと考えます。

 

 

括約

横隔膜の中央には、2つの穴が空いています。ここには、食堂と大静脈が通っています。
大動脈は後ろ側です。

 

 

食堂と静脈は内容物を先へ送る機能がありません。

そのため、筋の活動(括約)で送る必要があります。

 

 

まとめ

呼吸において重要な横隔膜の機能をみてきました。

横隔膜が正常に働くことが正しい呼吸には重要になります。

 

では、横隔膜が正常に働くにはどういった状態が望ましいのでしょうか?

次回はそちらをみていきましょう!

 

 

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