退化の進化~腓骨~

機能解剖

【退化の進化~腓骨~】

複雑骨折や関節炎で骨を切断して短くなった場合に、骨移植という方法があります。

取り去っても大きな影響がない骨があり、それがスペア骨「腓骨」です。

膝関節にも関与することなく、荷重の10%程度しか支えていないとされています。

では、この腓骨はなぜこのような状態になったのでしょうか。

これは進化を紐解くと見えてきます。

 

 

脚特有の役割から腓骨は退化

ヒトの手足は、もっといいますと四足動物の体肢は肺魚やシーラカンスのような肉鰭類(にくきるい)の胸ビレと腹ビレから進化してきました。

陸上に上がり両生類となった段階で、後脚:大腿骨、脛骨、腓骨が備わることになりました。(前脚:上腕骨、橈骨、尺骨)

サンショウウオのような両生類は、前後脚ともに肘・膝を側方に張り出す形をとっている「側方型」です。

この姿勢で歩くと、前脚、後脚を前後にくねくねと水平面上に動かすことで進みます。

この段階では、脛骨、腓骨ともに大きさに違いはありませんし、膝関節に関与しています。

 

しかし、哺乳類になると脚が胴体の下に入り込む「下方型」になります。

なぜ下方型になったかというのには諸説あるようです。

脚の保温のためであるとか、外敵に襲われないために脚を胴下に引っ込めたなど…

なかでも有力とされているのが、「手足の接地点を身体の重心位置に近づけるため」という説です。

前後左右どちらの面から見ても重心に近づいており、不安定感は高まりますが、運動性がより向上したことがわかります。

このことで、前脚(肘)は前に曲がるように、後脚(膝)は後ろに曲がるようになりました。

(※肘が前に曲がる=肘自体は後方に、膝はその反対なので、身体の重心位置に近づく事ができる)

 

その後、手足の機能はそれぞれ変わっていくこととなりますが、そこは割愛いたします。

後ろ脚の役割は、手と違い、物を掴んだり扱ったりする必要がないため、より身体を動かすことです。

 

骨というのは、断面の形が円形に近いほど強度が増します。

さらに、複数に分かれるよりも1本のほうが良いのです。(脛骨、腓骨の2本だと力の伝達が分散してしまう)

そのため、腓骨は膝関節から外れて荷重がかからなくなり、退化をしていきます。

かわりに脛骨はますます太くなっていきます。

両生類では同じだった太さが、爬虫類、哺乳類と進化するにつれて、両者の太さには差がつくことになります。

こうして、現在のヒトでは、腓骨が荷重をほとんど支えることはなく、スペア骨となったのです。

 

 

ちなみに…

馬は腓骨が殆どないというくらいに小さくなっています。

これは、だだっ広い草原をより早く走るため、骨を一本化したのです。(地面に障害物も少ないので、足を地面にフィットさせる必要がない。ヒトの場合は、足部の骨が26個あり地面に適応しやすくなっている)

反対に、ライオンなどの食肉類やオランウータンなどの霊長類は、複雑な地形を動くために、尺骨のように腓骨がねじれて動くことが可能です。

また、アシカやアザラシ、ナマケモノなどは脛骨腓骨が一本化しています。

動物の運動様式によって、骨も進化しているのですね。

 

セミナー情報

足部・足関節、膝関節の機能解剖学を基礎から深く学びたい方におすすめです☆

「足部・足関節編」
https://req.qubo.jp/catback4h/form/JCiuleMU

「膝関節編」
https://req.qubo.jp/catback4h/form/iEDX6CMn

この記事を書いた人
鈴木 孝佳

アスレティックトレーナー兼プロダクトマネジャー。
自他ともに認める健康オタク(最近、生命線が手首を突き抜けている事に気づいた)
音楽が好き。(ギター、ドラム、カラオケを嗜む)
休日には、東京の美味しいものを探しに。

鈴木 孝佳をフォローする
機能解剖
鈴木 孝佳をフォローする
Trainer's Library

コメント