横隔膜を機能させるために知っておくべきこと

呼吸

前回の記事では、呼吸の基本と、横隔膜の役割についてみていきました。

呼吸の基礎~横隔膜と腹腔内圧~
「呼吸を変えることができなければ、体の不調は改善できない」とは有名な言葉ですが、呼吸は人間が生きていく上で最重要な行為です。 2~3ヶ月食べなくても生きていくことは可能ですし、数日水を飲まなくても死ぬことはありません。 しかし、ものの5...

今回は、横隔膜を正しく機能させるにはどうすればよいか。

その基礎となる考え方をご説明していきます。

 

固定点(fix point)と動点(mobile point)

横隔膜の付着を前回の記事でみていきましたが、自分自身に付着をもった変わった筋であるとご説明しました。

筋は収縮する際に基本的にはどちらか一方が固定点(fix point)となり、他方が動点(mobile point)となって動きます。

横隔膜の場合、「腱中心が固定点となり肋骨部、胸骨部、脚部が動点となる」か「肋骨部、胸骨部、脚部が固定点となり腱中心が動点となる」かのどちらかです。

※肋骨、剣状突起、腰椎に付着している

 

※横隔膜を下から。白い部分が腱中心。

 

横隔膜はテント型をしているので、それでいうと、テントの頂点に向かってテントがめくり上がってくるのか、テントの頂点が地面に落ちてくるのか、です。

※赤:腱中心 青:肋骨部・腰椎部。矢印は腱中心が動点の場合。

 

望ましい動きとしては上図になります。(安静時呼吸において)

つまり、腱中心が下がってくる、ということです。

 

腱中心が下がってくることで、前回伝えした呼吸時の胸腔の動き方が実現します。

  1. 横隔膜の下降とそれに伴うドームの平坦化により、胸郭の垂直径が増す
  2. 横隔膜の下降によって腹圧上昇し、下位肋骨が側方へ拡張
  3. 腹横筋や内臓の反発を受け、起始と停止が逆転し横隔膜肋骨繊維が収縮、中位・下位胸郭が拡張する

腱中心が下降することで、上記の①と②が発生します。

前者(腱中心が固定点となり肋骨部、胸骨部、脚部が動点となる)の動きでは、肋骨部が前方に開いてしまい、呼吸のエラーが発生します。

 

では、腱中心が下降するにはとうすればよいか。

答えは簡単ですね。

肋骨部側と腰椎部(脚部)を固定できればよいわけです。

腱中心よりも強い力で押さえていれば、そちらが固定点となります。

結果、腱中心は落ちてくることになります。

肋骨部を安定させるには、腹筋群が重要です。

特に、腹横筋、内腹斜筋の活動が欠かせません。

 

※右腹横筋と左内腹斜筋

 

このときに、腹直筋などで固めてしまうと下位胸郭が閉じてしまい、下位胸郭の拡張を妨げることになります。

※正しい下位胸郭の拡張

 

これが持続すれば、チェストグリッピングとなります。

チェストグリッピングとは、言葉通り、「胸を綴じ」ます。

結果、下位胸郭の拡張が得られず、胸郭全体の拡張(ここまでお話してきた胸郭の動き)が阻害されます。

 

腰椎部では、多裂筋、大腰筋、胸腰筋膜によって安定させます。

※オレンジは大腰筋。大腰筋/多裂筋は共同で働き、横隔膜/大腰筋も互いに影響する

 

多裂筋は腰椎安定性の2/3を担っていましたね。

こういった意味でも呼吸に携わっています。

では、肋骨部、腰椎部が安定したらそれでOK?といわれるとイコールではありません。

横隔膜のテントの高さも重要です。

 

ZOAを獲得する

横隔膜をテントに見立てた場合、天井の頂点から地面までの距離が長いほど、力が発揮しやすくなります。

テントが低いと、横隔膜筋繊維のミオシンーアクチンがすでに重なっているため滑走しにくく(短縮位から収縮はしにくい:Length Tension Relation Ship)、思うように力が発揮できません。

そのため、テントの高さが必要になります。

このことをZOA(Zone Of Aposition)といいます。

 

 

アポジションとは、「並置」という意味なので、重なっている部分と理解することが出来ます。

つまり、横隔膜の筋繊維が重なり合っている部分はどれくらいありますかということです。

横隔膜の殆どは垂直繊維であり、背側と腹側の筋繊維が並行になっている部分が大きいほどZOAに高さがあると言います。

このZOAがしっかり確保できていると、横隔膜は力強く収縮し呼吸筋としての役割を果たします。

ZOAがある=弛緩位(リラックス)が取れています。

横隔膜は吸気筋ですから、吸気が収縮、呼気が弛緩です。

つまり、呼気ポジションがとれることで横隔膜のZOAは形成されることになります。

ZOA形成に重要なことは、①肋骨部と腰椎部を安定させること、②呼気がしっかり出来ること、③神経的にリラックスが得られていることです。

 

まとめ

横隔膜を正しく機能させるための考え方をお伝えしました。

  1. 固定点と動点
  2. ZOAの形成

です。

呼吸と切っても切り離せない横隔膜をしっかり理解出来ると現場で大いに役立ちます。

 

この記事を書いた人
鈴木 孝佳

アスレティックトレーナー兼プロダクトマネジャー。
自他ともに認める健康オタク(最近、生命線が手首を突き抜けている事に気づいた)
音楽が好き。(ギター、ドラム、カラオケを嗜む)
休日には、東京の美味しいものを探しに。

鈴木 孝佳をフォローする
呼吸
鈴木 孝佳をフォローする
Trainer's Library

コメント