姿勢を安定させるために必要な3つの要素【視覚・前庭・体性】

姿勢
姿勢の平衡を保つには、体の様々な感覚器が相互作用する必要があります。
 
前回紹介した身体図式(=ボディスキーマ)も絶賛大活躍します。
 
身体図式と身体イメージとは~姿勢、運動との関係性~
身体図式は、無意識下で統合されている身体の情報のまとめであり、姿勢や運動時に全体がどうなっているかの情報を与える。 身体イメージは、身体図式に視覚情報が加わったものであり、何かがトリガーとなり意識下にのぼる。 道具の操作では、身体イメージが正確にできているかが重要であるが、身体図式と視覚が適切に働いてなければならない。
 
ヒトの感覚器には嗅覚やら、味覚やら視覚やら聴覚やら色々ありますが、姿勢において重要なものは視覚と前庭覚(平衡覚)、体性感覚の3つになります。
 
これらが相互に作用することで絶妙に姿勢の平衡を保っているわけですね。
 
どれか1つが働かなくなったら姿勢はどうなるか?
 
立てなくなるでしょうか?
 
実は、意外と立てるんですね。(転倒しないという意味で)
 
3つのうち2つが機能していればヒトは姿勢を保っていられます。
 
ただし、1つになった場合、それは不可能となります。
 
そんな姿勢保持において重要な3つの感覚器の役割をみていきましょう。
 
 

体性感覚が姿勢に70%貢献する

3つの中で最も姿勢に役割を果たすのが、体性感覚です。
 
約70%程度は体性感覚の情報に依ります。
 
足底感覚をはじめ、身体中の筋紡錘やゴルジ腱などが筋や関節の状態を絶えず脳に伝えています。
 
「今私の身体はこういう状態です!」というのを教えてくれます。(脳は安心する)
 
足底感覚は、地面の肌理を捉えるのに大きな役割を果たします。
 
柔らかいのか硬いのか、傾いているのか凸凹なのか。
 
そういったことを情報として捉えています。
 
 

前庭覚はより原始的な機能

お次に前庭覚。
 
こちらは、20%ほどのウェイトを占めています。
 
とはいえ、前庭覚が働かないと結構ヤバメです。
 
前庭覚は、重力や加速度、傾きを感じ取ります。
 
平衡感覚を感じ取る機能は、どの生物にもあり、原始的な機能であると言えます。
 
前庭小脳という部位が小脳にはありますが、ここは原皮質と呼ばれる最も古い脳からできています。
 
要は、生物にとって平衡を感じる、重力を感じるというのは重要だということですね!
 
特に、私達が立位を維持するためには、重力はとても大切です。
 
重力があるからこそ、床からの反力が返ってきて姿勢を保持できます。
 
この重力を感じ取るのが前庭ですので、前庭の機能低下や不全は姿勢保持に重大な問題を起こします。
 
その状態で目をつぶったらまず立てないでしょう。(相当揺れます)
 
ヒトはその場でジッと立っていても絶えず小さく揺れており、前庭覚はそれを素早く感知して姿勢を常に修正して保ってくれています。
 
 

影響力の大きい視覚

視覚の平衡保持への貢献度は10%ほどです。
 
視覚はボディスキーマに含まれておらず、姿勢の修正にはあまり役に立ちません。
 
ただし、予め外界の情報をゲットして脳に伝えます。
 
先行的に入る情報によって、その後の姿勢保持に貢献しています。(フィードフォワード)
 
視覚は姿勢保持の貢献度が低いのは、視覚情報の処理というのは時間がかかるので姿勢が常にゆらゆらしているのを修正するのに役に立たないからです。
 
目を開けていたら立てるけど、閉じた瞬間不安定になる人は普段、視覚に頼っている可能性が高いと考えられます。(小脳機能不全でもある)
 
そんな視覚は影響力がでかく、視覚によって姿勢が変化してしまうこともあります。
 
例えば、目の前にフレンドリーパークのでっかいルーレットがあったとして、右に回っているのを見ると、自分は左に傾いていると判断し、右に身体を傾けることでバランスをとろうとしたりします。
 
前庭覚と共同で働くシステムを有しており、前庭が機能していないと視覚機能は低下します。
 
ちなみに、体性感覚、前庭覚、視覚のうち、1つしか働かなくなった時、どういったことが起こるでしょう?
 
次では、その状態を見ていきます。(へぇ~くらいの知識ですが笑)
 
 

体性感覚だけしか働かなくなったら?

体性感覚のみ働いた場合、もちろん立てないのですが、地面の情報の質が低下します。
 
例えば、下りの坂道に立っているとします。この時、足関節は底屈していますね。
 
体性感覚のみの場合、地面が斜めで足関節が底屈しているのか、地面は水平だが足関節が底屈(つまり背伸び)しているのか分かりません。
 
同じく、砂浜のような柔らかい場所に立っていて足が沈んでいても、自分が下がっているのか、地面があがっているのか理解できません。
 
という状況になります。
 
意外と適当!なんですね。
 
 

前庭覚だけだったら?

前庭覚しか働かない場合、自分の身体が動いているのか、頭だけが傾いただけなのかが理解できません。
 
前庭覚は、つまるところヒトにとって超重要な頭部を垂直に保つための装置ですが、前庭覚だけではその役目を果たせません。
 
例えば、頭だけが右に傾いた時、「ちょっとおまさん、頭傾いてまっせ」と教えてくれます。
 
この時、耳の中、いわゆる内耳では、耳石のクプラが動いて動きを感知します。
 
クプラはクラゲみたいな形をしており、その揺れで感知していますが、頭を傾けても、真横に動いても揺れますのでそのどちらかが分かりません。
 
横に動いたのか、頭だけが傾いたのかの判断を誤るとその修正も全然違ったものになるので大変なことになります。
 
前庭覚だけでは正しく対応できません。
 
 

視覚だけ…

視覚だけの場合、自分が動いているのか、周囲が動いているのかが分からなくなります。
 
例えば、車に乗っていて(東京の人はほぼ電車に乗っているのを思い浮かべてね)、隣同士に車体が並んで停車、その後車体がほんとにゆっくり動き出した時、一瞬自分が乗っている車が動いたか、相手が動いたかわからなくなるときがありますよね?ほんの一瞬。
 
その後、本格的に動いて揺れとか動きを感知することで、「あ、コチラが動いたのね」と分かったりします。
 
 
現場で役立つのは、歩行に関することですかね。
 
歩行時も、「自分がどこでどうなっているのか」というのを理解しておく必要があります。(じゃないと恐怖を感じる)
 
歩行時には、自分が進んでいる!という感覚をもつ必要がありますが、そのためには、まさに話してきた視覚、前庭覚、体性感覚が必要です。
 
重力や頭部の動きの感知、腕の降り(アームスイング)、オプティックフロー( Optic flow:光流と訳される)の3つが統合されて、自分が歩行しているということを認知できます。
 
これをセンタリング(Centering)といいます。
 
【アームスイング】
中脳の上丘の高さにある左右1対の大きな神経核である赤核の機能で起こる。
赤核は大脳皮質運動野と小脳の上小脳脚から入力を受け、その出力を下オリーブ核と脊髄へ送る。
赤核脊髄路は錐体路の働きを助けて,四肢の遠位関節屈曲を起こす屈筋に作用する。
 
【オプティックフロー(Optic flow)】
身体または物体の動きによって、網膜上に生じる規則的かつ光学的な変化のパターンを指す。
日常行為を正しくする上で極めて重要な知覚情報である。
 
【センタリング(centering)】
歩行時に視覚機能は前後左右上下の動作認識を助ける。
 
ちゃんと歩くためにも、3つの感覚がしっかり働く必要がありますよ。
 
 

まとめ

人が姿勢の平衡を保つには、3つの感覚器からの情報が不可欠です。
 
姿勢が正しくとれていない場合、それぞれが正しく働いているか、評価することも大切です。
 
 
この記事を書いた人
鈴木 孝佳

アスレティックトレーナー兼プロダクトマネジャー。
自他ともに認める健康オタク(最近、生命線が手首を突き抜けている事に気づいた)
音楽が好き。(ギター、ドラム、カラオケを嗜む)
休日には、東京の美味しいものを探しに。

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